2013年6月にユネスコ世界文化遺産に登録された富士山の正式名称は、「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」です。単なる自然地形ではなく、日本人の精神文化や浮世絵などの芸術作品に多大な影響を与えた「文化的景観」として評価されました。
この世界遺産登録においても、静岡県と山梨県はライバル関係を超えて一致団結し、合計25箇所に及ぶ「構成資産」を共同で登録しています。
山梨県側には、富士講信者が集った「北口本宮冨士浅間神社」や、巡礼地となった「忍野八海」、名勝「富士五湖(河口湖・山中湖・本栖湖・精進湖・西湖)」などが名を連ねています。千円札の裏面に描かれた岡田紅陽撮影の「湖畔の春(本栖湖に映る逆さ富士)」に代表されるように、芸術の源泉としての圧倒的な存在感を誇ります。
一方、静岡県側には、全国1,300社以上の浅間神社の総本社である「富士山本宮浅間大社」をはじめ、山岳信仰の拠点となった「村山口登山道」、さらには富士山から約45km離れた駿河湾沿いの景勝地「三保松原(みほのまつばら)」が含まれます。激しい議論の末に三保松原が逆転登録された背景には、歌川広重の浮世絵に見られる「海越しに望む霊峰富士」という文化的価値が国際的に認められた経緯があります。