現在、国の防災施策の中核を成しているのが、地震調査研究推進本部(地震本部)が主導する長期評価システムである。地震本部の委員長などを歴任してきた平田直・東京大学名誉教授は、確定的な予知への執着を戒めつつ、確率論に基づいたリスクマネジメントの徹底を訴え続けている。
「今後30年以内に70〜80%」といった発生確率は、日常の感覚では曖昧に聞こえるかもしれない。しかし平田氏は、この確率が示す意味を「明日起きても全く不思議ではない極限状態」と定義する。地震本部は、全国の主要活断層や海溝型地震の発生周期を綿密にモデル化し、確率論的地震動予測地図を更新してきた。
このデータは、自治体のハザードマップ策定や企業のサプライチェーン強靱化の絶対的基準となっている。確率を理解し、最悪のシナリオを前提とした都市計画を敷くことこそが、人命被害を最小化する唯一の現実解なのだ。