Web上の簡易的な解説記事では、「後ろが単数形ならin、複数形ならofと覚えれば良い」という大雑把なルールが頻繁に紹介されています。しかし、この簡略化されたルールだけを盲信していると、難関高校入試や大学共通テスト、TOEICの難問で見事にトラップに引っかかることになります。
盲点1:集合名詞(family, team, staff)の扱い
「family」や「team」は単数形ですが、文脈によって捉え方が変わるため注意が必要です。
- Ken is the tallest in his family.(家族という『1つのグループ枠』の中で最も背が高い)
- Ken is the tallest of his family members.(家族の『構成員たち』の中で最も背が高い)
名詞そのものが「枠・組織」を指している場合はinが自然ですが、「members」などの複数形が補われた瞬間にofへと変化します。単語の文字面だけでなく、「枠組みとして扱っているのか」「個々の人間にフォーカスしているのか」を見極めなければなりません。
盲点2:複数形に見える固有名詞(the United States, the Philippines)
「the United States」は末尾に「-s」が付いていますが、実態は「アメリカ合衆国」という1つの国家(場所)です。
This is the largest lake in the United States.
(これはアメリカで最大の湖です)
文字面に引きずられて「複数形だからofだ」と判断すると誤答になります。国や地域である以上、空間的な広がりを表す「in」を用いるのが正解です。
認知言語学が解き明かす「in」と「of」のコアイメージ
なぜこのような使い分けが生じるのか、その本質は前置詞のコアイメージにあります。
- inのコアイメージ:容器・枠の内側(Container)
ある境界線(学校、世界、日本)の内側にすっぽり収まっている状態を示します。主語と後ろの名詞は「包含関係(部分は全体の中にある)」になります。 - ofのコアイメージ:分離と抽出(Separation / Part of Whole)
同質のものが集まった母集団から、「コロン」と一部を取り出す感覚です。したがって、取り出された主語と、残りの集団は「同質・対等な存在(生徒の中の1人の生徒、本の中の1冊の本)」でなければなりません。
「He is the best player in the team.」では、彼(人間)とチーム(組織枠)は同質ではありません。枠の中に彼がいるからinです。一方、「He is the best player of them all.」では、彼(人間)と彼ら(人間たち)は同質です。同質の中から1人を抽出しているからofになるのです。このコアイメージを掴んでおけば、未知の英文に出会っても迷うことはなくなります。