サーカスから動物が姿を消していく流れは、もはや一時的なブームではなく、不可逆のルールとなった。欧州主要国での野生動物利用禁止法の施行、観客自身の意識変化。いまの観客は、どれほど見事な芸であっても、そこに動物の苦痛や強制が透けて見えた瞬間に拍手を止める。
この倫理的プレッシャーは、サーカスという表現様式そのものを脱皮させた。ドイツのサーカス・ロンカリのようにホログラム技術で巨大な象をリングに投影する試みや、精巧なマリオネット、あるいはアクロバット自体を極限まで物語化する演出。動物という「圧倒的な他者」を失ったサーカスは、表現の逃げ場を失ったことで、かえって純粋な舞台芸術としての強度を高めざるを得なくなったのだ。