「水分をたくさん取れば治る」という言葉を拡大解釈し、普段飲み慣れている緑茶やコーヒー、清涼飲料水を大量に飲んでしまう失敗が後を絶ちません。膀胱炎の急性期において、カフェインが症状を悪化させる決定的な理由は、その薬理作用にあります。カフェインには膀胱三角部と呼ばれる知覚神経が密集したエリアを直接刺激し、膀胱の筋肉(排尿筋)を収縮させる働きがあります。炎症で過敏になっている粘膜が強制的に刺激されるため、我慢できないほどの尿意切迫感や下腹部の差し込むような痛みが一気に跳ね上がってしまうのです。
また、大人の社交や晩酌で問題になるのがアルコール飲酒の真相です。「ビールを飲めば利尿作用で菌がたくさん出るのではないか」という俗説を信じる方が時折いますが、これは医学的に極めて危険な誤解です。アルコールは脳下垂体からの抗利尿ホルモン(バソプレシン)の分泌を抑制するため、体内から水分を奪い去り、結果として尿を濃縮させて膀胱刺激を強めます。さらに、エタノール代謝に伴う末梢血管の拡張は炎症部位の充血と浮腫を悪化させ、免疫細胞の遊走能を低下させるため、大腸菌の増殖を勢いづかせる結果にしかなりません。
見落としがちなのが、膀胱炎時のNGな食べ物である刺激物の数々です。唐辛子に含まれるカプサイシン、過度なスパイス、強い酸味を持つ柑橘類(レモンやライム)、人工甘味料を大量に含む炭酸飲料などは、代謝産物が尿中に排泄された際、傷口に塩を塗り込むような直接的化学刺激を膀胱粘膜へ与えます。痛みが引くまでの数日間は、薄味で胃腸に優しく、膀胱粘膜をいたわる和食中心のメニューにシフトすることが痛みを長引かせない絶対条件です。