栄光の頂点にあった一家を襲った最大の悲劇が、1970年代初頭の「パシフィックホテル茅ヶ崎」の倒産劇だった。上原謙と加山雄三が共同で役員を務めていたこのリゾートホテルは、経営難から莫大な負債を抱えて破綻。加山は当時のお金で数十億円という天文学的な連帯保証人債務を背負うことになる。
当時の芸能界では「加山雄三はもう再起不能だ」と囁かれた。ヒットチャートから遠ざかり、映画の仕事も激減する中、毎月の利息返済だけでも途方に暮れる日々が続く。しかし、加山は逃げなかった。全国のキャバレーや地方のナイトクラブを巡り、泥臭く歌い続けた。父・上原謙もまた、自らのプライドを捨ててテレビドラマの脇役やバラエティ番組、CMに精力的に出演し、息子と共に借金返済のために頭を下げ続けた。
「息子の借金を親が背負うのではなく、親子の責任として二人で背負う」。互いを責め立てるのではなく、黙々と働いて完済を目指した十数年間。この壮絶な試練こそが、甘えを許さないプロフェッショナルとしての絆を強固にした。昭和の大スターが汗と涙に塗れて這い上がった姿は、世間の胸を強く打った。