なぜこの3つなのか。答えは「帝国の財力」と「宮廷の美食追求」にある。料理が単なる栄養補給を超えて芸術の域に達するためには、絶え間なく珍味を買い集める資金力と、最高の料理人を囲い込む権力構造が不可欠だった。
フランス料理はルネサンス期にイタリアからもたらされたマナーや調理法を基盤に、ブルボン朝の宮廷で花開いた。複雑極まるソースの体系化と、コース料理という様式美。それは近代西洋料理の共通言語となった。一方で中華料理は、4000年とも称される悠久の歴史と広大な国土、そして清朝の「満漢全席」に代表される圧倒的な食材の多様性が武器だ。医食同源の哲学を根底に持ち、火と油を自在に操る技術は他の追随を許さない。
そしてトルコ料理。かつて地中海から中東、北アフリカまでを支配したオスマン帝国の宮廷(トプカプ宮殿)で洗練された。ユーラシア大陸の東西を結ぶ交易の要衝であったイスタンブールには、世界中のスパイスや食材が集積した。この3者に共通するのは、一国の郷土料理の枠を遥かに超えた「帝国スケールの多様性」に他ならない。