日本のテレビドラマ史において、医療ドラマは常に高視聴率を狙える鉄板ジャンルとして君臨してきました。しかし、その多くは大学病院内の権力闘争を描く男性主導の重厚な巨塔劇か、あるいは献身的な医療従事者のヒューマンドラマに二分されていました。その既成概念を根底から覆したのが、米倉涼子さんが演じた『ドクターX ~外科医・大門未知子~』です。
「群れを嫌い、権威を嫌い、束縛を嫌い、専門医のライセンスと叩き上げのスキルだけが彼女の武器」。オープニングのナレーションそのままに、米倉涼子さんは白衣の下にミニスカートとピンヒールを合わせ、堂々と大学病院の廊下を闊歩しました。「私、失敗しないので」「いたしません」という切れ味鋭い名セリフは、瞬く間に流行語となり、老若男女を問わず日本中をスカッとさせる痛快劇として定着したのです。
米倉涼子さんの演技に対する評価が極めて高かった理由は、単なる派手なキャラクター付けにとどまらず、外科医としての圧倒的な覚悟と孤独を佇まいだけで説得力豊かに表現し切った点にあります。権力に阿(おもね)ることなく、患者の命を救うという医師本来の使命だけに純粋に向き合う姿は、閉塞感の漂う日本社会において強烈なカタルシスをもたらしました。