かつてサブカルチャーの文脈で消費されていた「病みかわいい」や「メンヘラ」という言葉は、いまや日常の人間関係を語る上で避けて通れないラベルとなった。Netflixで配信され共感を呼んだドラマ『凪のお暇』や、不器用な執着と妄想を描いた映画『勝手にふるえてろ』のように、現代のエンタメ作品は「情緒の危うさを抱えた人間が他者とどう繋がるか」を繰り返し問いかけている。画面の中の彼女や彼らは愛おしく見えても、それが毎日の生活となれば話は別だ。
恋愛心理学の視点から見れば、過剰な試し行動や見捨てられ不安は、幼少期の愛着形成や自己肯定感の欠如に根ざしているケースが多い。一方で、日本精神神経学会の臨床知見が示す通り、単なる性格の偏りを超えて境界性パーソナリティ障害(BPD)などの診断基準に該当する病理が潜んでいる場合もある。「気分屋なだけ」「愛情表現が激しいだけ」と素人判断で片付けることは、当事者双方にとって危険なギャンブルに等しい。