歌詞の中盤には、西洋哲学を代表する「ニーチェ」と精神分析の創始者「フロイト」の名が唐突に登場します。ポップスの歌詞としては異色のワードチョイスですが、ここにはn-bunaの極めて計算された意図が存在します。
フリードリヒ・ニーチェは「神の死」を告げ、従来の価値観を疑って自らの意志で生きることを説きました。一方、ジークムント・フロイトは人間の無意識や抑圧された欲望を科学的に分析しようと試みました。人類の歴史上、最も深く「人間の生と苦悩」を論理的に解明しようとした偉人たちです。
しかし、主人公はそんな大理論を引き合いに出した上で、次のように吐き捨てます。どれほど偉大な学問や論理を積み上げても、「目の前で自分が胸を痛めている理由」「他人と比較して劣等感に苛まれる日常の痛み」に対しては、何の特効薬にもならないという現実です。
学問や正論による「頭での理解」と、生身の感情が引き起こす「心での苦痛」の決定的な乖離。高尚な思想ですら自分ひとりの孤独を埋めてくれないという絶望を、ニーチェとフロイトという固有名詞を使うことで強烈に浮き彫りにしています。