新潮社から刊行され、第25回山本周五郎賞を受賞した『楽園のカンヴァス』は、彼女の代表作であり最高峰のアートサスペンスだ。素朴派の巨匠アンリ・ルソーの代表作『夢』に酷似した幻の名画を巡り、2人の専門家が真贋判定の権利を懸けて対峙する。
この作品の凄みは、ルソーという孤高の日曜画家が生涯抱え続けた純粋な狂気が、物語の芯に据えられている点にある。単なる謎解きではない。美術界の熾烈な権力闘争と、学芸員だけが知る緊迫の調査プロセス。キュレーターとしての実体験が注ぎ込まれた緻密な裏設定があるからこそ、フィクションと現実の境界が溶け合い、息をのむ結末へと読者を導く。