JR小樽駅から徒歩約5分、雨や雪の日でも傘を差さずに歩ける「小樽都通り商店街」。アーケードのノスタルジックな景観に溶け込む赤と白のファサードこそが、中華食堂桂苑の歴史と経緯を今に伝える舞台です。創業は昭和39年(1964年)。東京オリンピックが開催され、高度経済成長の熱気が日本列島を包み込んでいた時代に産声を上げました。
当時の小樽は、かつての日本海航路の要衝としての港湾景気が落ち着きを見せつつも、商業者や港湾労働者で街が活気に満ちあふれていました。過酷な寒冷地で働く人々が求めたのは、芯から体を温め、エネルギーをすばやく補給できる濃厚な料理。その需要に応える形で誕生し、港町独自の食文化として根付いたのが、丼や皿いっぱいに盛られた熱々の餡かけ麺でした。
商店街振興組合の記録や地元郷土史の記述を紐解くと、都通り商店街が近代化アーケードを完成させた昭和40年代から50年代にかけて、桂苑は買い物客や近隣商店主の胃袋を支える中核店舗として定着していった経緯が記されています。平成期に入り、町おこし団体「小樽あんかけ焼そば親衛隊」が結成された際も、桂苑はその中核店・象徴的存在として全国へ情報発信を牽引。時代が令和へ移り変わっても暖簾の重みを守り続け、2026年を迎えた今も変わらぬ製法で鍋を振り続けています。