上島竜兵という芸人の本質はどこにあったのか。生前の上島さんと現場を共にしたテレビ制作者や舞台関係者の証言を丹念に拾い上げると、カメラが回っている時の「怒られ役・いじられ役」と、カメラが止まった後の「真摯で繊細な表現者」という二面性が際立ちます。
熱湯風呂に落ちるタイミング、おでんの具が唇に触れる角度、帽子を頭の上で回す『くるりんぱ』の軌道に至るまで、上島さんは極めて計算された職人肌の笑いを追求していました。「リアクション芸は命がけのジャズセッションのようなもの」と語っていたように、自らが泥をかぶることで共演者全員を引き立たせる名人でした。
しかし、その高い技術とサービス精神の裏面として、素顔の上島さんは自己肯定感が極めて低く、「自分が本物の芸人なのか」と生涯悩み続けていたと言われています。妻の広川ひかる氏も「家では本当に静かで、テレビの自分を見ては反省ばかりしていた」と著書で打ち明けています。
周囲がどれほど「面白い」と絶賛しても、本人の心にある孤独や空虚感は埋まらない。他人を笑わせることに全エネルギーを注ぎ込んだ表現者が、自らの心の痛みをケアする手段を持てなかった現場の実態が浮き彫りになっています。