「なぜ日芸からはこれほどまでにスターや著名クリエイターが生まれ続けるのか」。多くの人が抱くこの疑問の答えは、練馬区に位置する日本大学芸術学部 江古田キャンパスの現在の構造と、長年培われてきた「共創の生態系」にある。
日芸の出身芸能人・有名人一覧を俯瞰すると、その幅広さに圧倒される。三谷幸喜、宮藤官九郎(中退)、佐藤隆太、真田広之、船越英一郎、松井玲奈といった第一線の俳優・劇作家から、よしもと所属の人気芸人、テレビ局の現役エグゼクティブ、さらには芥川賞作家や報道キャスターまで枚挙にいとまがない。彼らが在学時代を振り返る際、共通して語るのが「江古田という街の異様な濃密さ」だ。
三谷幸喜氏は過去のインタビューやエッセイの中で、学生時代に演劇学科のみならず、映画学科や音楽学科の学生とキャンパスの中庭で交わり、自主公演のスタッフやキャストを阿吽の呼吸で集めた経験を述懐している。映画学科が作品を撮れば、演劇学科から役者を調達し、美術学科がセットを組み、音楽学科が劇伴を作曲し、写真学科がスチールを撮影する。この8学科が単一キャンパスに集結している環境こそが、プロの制作現場そのものの縮図なのだ。
学生たちは講義を聴くだけでなく、10代後半から20代前半の多感な時期に「他者の才能に嫉妬し、揉まれ、共同で一つの表現を完成させる」という実社会の現場体験を徹底的に繰り返す。この環境が、社会に出た瞬間から即戦力として機能する胆力と現場感覚を養い、結果として数多のスターやヒットメーカーを輩出する原動力となっている。