1970年代初頭、米軍はフライトジャケットの歴史において極めて重大な転換点を迎えました。それまで主力だったMA-1やL-2Bなどのナイロン素材は、燃料火災の熱で溶融してパイロットの皮膚に深刻な熱傷を負わせるリスクを抱えていたのです。そこでデュポン社が開発した難燃性アラミド繊維「ノーメックス(NOMEX)」を全面採用し、米空軍・海軍・陸軍・海兵隊の全軍統一フライトジャケットとして制式採用されたのが「CWU(Cold Weather Uniform)」シリーズでした。
そのなかでライトゾーン(薄手・春夏秋用)として設計されたのが「CWU-36/P」です。『トップガン マーヴェリック』劇中でマーヴェリックが着用したことで世界的なプレミアムがつきましたが、一過性の流行で終わらなかった最大の要因は「実用性の高さ」にあります。MA-1のような丸みを帯びたバルーンシルエットとは異なり、CWU-36/Pは衿(シャツカラー)が付いた端正な顔立ちと、斜めに配された大型スラントポケット、そして中綿を排した軽量設計を持っています。この構造が、Tシャツやパーカーの上にさらりと羽織る日常着として絶妙な機能美を発揮しているのです。