スマートフォンの画面をいくらスクロールしても満たされない孤独感。都心の高価格なレストランで供される洗練された一皿よりも、土鍋で炊いた白米と自家製味噌の味噌汁が心に沁みる。そんな価値観の地殻変動が、20代から30代の若手起業家やクリエイターを地方へと駆り立てている。
彼らが目指すのは、高級料亭でも洗練されたビストロでもない。地域住民がふらりと立ち寄り、旅人がほっと息をつく「街の縁側」のような場所だ。大手IT企業を退職して長野県内の山あいに移住した30代の女性店主は語る。「ここでは時給やコスパという概念が意味をなさない。目の前の野菜を育てた農家さんの顔を知っていて、それを最高の状態で調理してお客さんに差し出す。そのサイクルの中にこそ、人間らしい商いの原点がある」