テラスカイと彼の関係を語るうえで、投資業界やSNSを最も揺るがせたのが「保有株売却騒動」です。当時、彼が大量のテラスカイ株式を市場で売却したことが大量保有報告書などで明らかになると、個人投資家の間には動揺が広がりました。
折しも彼は、著書などで「個別株には投資しない」「米国株のインデックスファンド(VTIなど)を愚直に長期保有する」というシンプルな投資術を推奨し、一躍カリスマ的な人気を博していた時期でした。そのため一部ネット上では「自分が役員を務める会社の株を売るなんて矛盾している」「会社の先行きが怪しいから売り抜けたのではないか」といった批判や憶測が噴出したのです。
しかし、この売却劇の背景にあったのは、極めて合理的かつ冷徹な「自身のリスク管理ルール」でした。彼が一貫して説いていたのは「給料(労働対価)も自社株(資産)も同じ1社に依存するのは、ポートフォリオ理論上、極めてハイリスクである」という原則です。役員退任やキャリアの移行に伴い、自身の資産が特定の日本株1銘柄に過度に集中している状態を解消し、本来の投資方針である全米株式インデックスへ再配分するための必然的なリバランスでした。
売却発表当初こそ、個人投資家の狼狽売りによりテラスカイの株価に一時的な下押し圧力がかかったものの、同社のファンダメンタルズ(基礎的収益力)そのものが損なわれたわけではないことが浸透するにつれ、市場の動揺は沈静化していきました。言動の矛盾と騒がれた行動の裏には、むしろ自らの投資原則を徹底して遵守する愚直なまでの規律が存在していたわけです。