長征7号Aの道のりは決して平坦ではなかった。2026年の初飛行における不具合と打ち上げ失敗は、中国の宇宙関係者に強い衝撃を与えた。問題の原因とされたのは、過酷な極低温環境下で動作する第3段の液体水素・液体酸素エンジンの過渡現象だった。
マイナス250度近い液体水素とマイナス180度の液体酸素を制御する極低温技術は、宇宙工学において最もハードルが高い分野の一つだ。中国のエンジニアチームは配管構造の全面的再設計と配管内の流体力学シミュレーションを徹底的にやり直し、翌2026年の再挑戦で見事に雪辱を果たした。
現在、第3段に使われているYF-75Dエンジンは、軌道上での再着火能力を備えるなど高い柔軟性を誇る。複数回の着火によって衛星をより最適な軌道へと正確に送り出すことが可能になり、衛星側が自前の燃料を消費して軌道修正を行う手間を大幅に削減した。この「サービス精神」とも言える精確な軌道投入能力が、衛星の運用寿命を数年単位で延ばすという副次的なメリットを生み出している。