日本人の精神的基盤を形成する二大潮流が「神道」と「仏教」です。両者の根本的な差異は、その起源と死生観に明確に表れています。
- 神道(固有信仰):自然崇拝から生まれた八百万(やおよろず)の神を祀る。死や血液を「穢れ(けがれ)」として遠ざけ、現世の繁栄や生命力を寿ぐ「祓い・清め」を重視する(神社・鳥居)。
- 仏教(外来宗教):6世紀半ばに大陸から伝来。釈迦の悟りを原点とし、輪廻転生からの解脱や死後の極楽往生を説く。死者の供養や魂の救済を司る(寺院・仏像)。
対極ともいえる両者を融合させたのが、奈良時代から明治初期まで1000年以上続いた神仏習合の歴史です。日本の神々は仏が民衆を救うために仮の姿で現れたとする「本地垂迹説(ほんじすいじゃくせつ)」が広く受容され、神社の中に神宮寺が建てられ、寺院の境内に鎮守社が祀られる共存体制が築かれました。
明治政府の「神仏分離令」やそれに伴う「廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)」によって両者は制度上切り離されたものの、庶民の生活感覚の中では混ざり合ったまま定着しました。現代の一般家庭において、同じ家屋の中に神棚と仏壇が違和感なく並んで祀られている光景こそ、神仏習合が残した歴史的遺産です。