競技会の世界で培われた極限のロジックが、この一杯には色濃く反映されている。かつてワールド・バリスタ・チャンピオンシップの舞台で世界を震撼させた井崎英典氏の抽出理論や、粕谷哲氏が提唱した「4:6メソッド」に代表される透過と浸漬のコントロール思想。これらは現在のスペシャルティシーンにおける共通言語となったが、その緻密なサイエンスを現場のオペレーションに落とし込んでいる点が際立つ。
単に流行りの豆を並べるのではない。水質データのモニタリングから粉砕粒度のマイクロコントロールに至るまで、一杯のカップに注ぎ込まれる情報量は桁違いだ。世界基準の舞台で競い合われてきた技術革新の果実が、カウンター越しに惜しげもなく提供されている。