DNAという物質がなぜ「生命の設計図」と呼ばれるのか、その秘密は鎖の内側に並ぶ4種類の塩基(アデニン:A、チミン:T、グアニン:G、シトシン:C)にあります。
これら4つの塩基の並び順(塩基配列)が、そのまま生命を形づくる暗号です。ヒトのDNAには約30億対もの塩基が並んでおり、3つの塩基の組み合わせ(トリプレット/コドン)が1つのアミノ酸を指定します。この塩基の配列情報をもとにRNAが作られ(転写)、さらにRNAの情報を解読してアミノ酸がつなぎ合わされ、筋肉や皮膚、酵素などのタンパク質が合成されます(翻訳)。この一連の流れを分子生物学では「セントラルドグマ」と呼びます。
ここで重要なのは、30億対ある塩基配列のすべてが遺伝子として働いているわけではないという事実です。実際にタンパク質の設計図として使われている「遺伝子領域」は、ヒトのDNA全体のわずか約1.5%〜2%程度に過ぎません。残りの領域は、遺伝子の働きをコントロールする調節領域や、進化の過程で蓄積した反復配列などであり、DNAという広大な物質の中に、飛び地のように「遺伝子」が存在しています。