街の隅々まで足を運んだ独自取材で見えてきたのは、画一的なチェーン店の攻勢に抗い、圧倒的な肉質で勝負する独立系店舗の躍進だ。とりわけ熱い視線を集めているのが、全国の名産地から独自のルートで仕入れる黒毛和牛の専門店である。
きめ細やかなサシが芸術的な網目を描くA5ランクの希少部位。熱した鉄板に載せた瞬間、澄んだ脂が音を立てて溶け出し、立ち上る甘い芳香が食欲を刺激する。口に運べば、噛み締める間もなく解けて広がる濃厚なコク。大通りから外れた住宅街の境目や雑居ビルの地下に佇む隠れ家こそ、真の肉好きたちが誰にも教えたくない秘密基地として静かに熱狂を呼んでいる。