野球を辞めると告げたとき、父である和利は息子の選択を一切否定しなかったという。プロの世界の厳しさを誰よりも知る父親だからこそ、息子が抱える苦悩や自尊心との戦いを静かに受け止めた。父と同じ土俵で戦うことを諦めた裕貴は、「父親が野球の世界で残した成果を超えるには、別の世界で一番を目指すしかない」と心に誓う。
二人が語るエピソードには、長年抱え続けた複雑な葛藤と、それを乗り越えたからこそ存在する深い絆が刻まれている。かつては「偉大な父の息子」として見られることが重圧であり、比較されることに苦しんだ夜もあった。しかし、父親は常に「自分が選んだ道で死ぬ気でやりきれ」と背中を押し続けた。父の厳しくも温かい眼差しが、息子の表現者としての腹の括り方を決定づけたと言える。