1960年代から70年代にかけて、松竹の看板俳優として映画界を牽引し、テレビドラマの黎明期を華々しく彩った竹脇無我。柔道ブームを巻き起こした『姿三四郎』の熱血漢から、山田太一脚本の名作『岸辺のアルバム』(TBSテレビ)で見せた影のある大人の男まで、彼が演じた役柄は常に時代の先端を走っていた。
端正な顔立ちと、聞く者の耳を捉えて離さない美声。完璧なスター像を体現していた男の私生活は、しかし決して平坦なものではなかった。若くして背負った一家の大黒柱としての重圧、名声に伴う孤独。そうした光と影が交錯する家庭環境の中で育った娘たちにとって、父・竹脇無我は遠いスクリーンの偶像ではなく、繊細で脆さを抱えた一人の人間そのものだった。