俳優としてキャリアの絶頂にありながら、荒牧は自ら「株式会社Pasture」を設立し、経営者・プロデューサーとしての顔を持つようになった。その根底にあるのは、後進の育成と、日本の舞台演劇界により健全で持続可能な制作環境を築きたいという強い危機感と情熱だ。
企画の立ち上げからキャスティング、予算管理、脚本のブラッシュアップに至るまで、彼がプロデュース現場で見せる眼差しは極めて現実的で鋭い。役者目線で「演じ手が最も輝く動線」を熟知しているからこそ、関わるキャストやスタッフの潜在能力を極限まで引き出すことができる。表舞台で浴びる歓声を誰よりも知る男が、あえて裏方の泥臭いデスクワークや交渉事に汗を流す。その二刀流の生き様こそが、荒牧慶彦という表現者の奥行きを深めている。