この切手が高値を維持し続ける最大の理由は、その美術的完成度の高さと発行枚数の少なさにあります。本作は昭和24年(1949年)の切手趣味週間に合わせて発行されました。題材となったのは、江戸時代後期の浮世絵師・歌川広重の代表作である大短冊判花鳥画『月に雁』です。澄み渡る満月の前を、3羽の雁が斜めに滑空していく静寂と躍動美を見事に表現しています。
当時の大蔵省印刷局が誇る高度な凹版印刷技術により、浮世絵の繊細な線画とぼかしの質感が単色(茶褐色)のインクで見事に再現されました。当時の定形外郵便料金に合わせた月に雁の額面8円切手として世に出ましたが、その発行枚数はわずか200万枚(5面シート換算で40万シート)にとどまりました。戦後の物資不足や混乱が残る時代背景も手伝い、状態の良いまま現存している数が限られていることが、現在に至る高い希少価値を支えています。