『鬼龍院花子の生涯』で覚悟を示した夏目雅子さんは、その後も妥協のない映画出演を続け、表現の幅を広げていきました。
1983年の映画『時代屋の女房』では、ふらりと現れては消える謎めいたヒロイン・真弓をチャーミングかつ哀愁を帯びた表情で好演。同年公開の相米慎二監督作『魚影の群れ』では、マグロ漁師の過酷な生き様に翻弄されながらも一途に愛を貫く女性を演じ、激しい感情のぶつかり合いを体現しました。これらの演技が高く評価され、第26回ブルーリボン賞主演女優賞を受賞。名実ともに日本を代表する大女優の地位を不動のものとしました。
そして1984年、篠田正浩監督の映画『瀬戸内少年野球団』で演じた江坂駒子先生役は、敗戦直後の混乱期に子どもたちへ希望を与える象徴的な存在となりました。白いブラウスに身を包み、子どもたちと野球に興じる屈託のない笑顔は、彼女の映画遺作の一つとして今も多くの人々の心に深く刻まれています。