会津の精神文化を語る上で欠かせないのが、「什の掟(じゅうのおきて)」の結びの言葉である「ならぬものはならぬものです」です。この言葉の意味と理由を、単なる理不尽な抑圧や思考停止の命令と捉えるのは誤解に過ぎません。
什の掟は、武士の子弟が6歳から9歳までの間に所属した地域コミュニティ「什」において共有された、日常生活における絶対的な道徳基準でした。
【什の掟の七カ条】
一、年長者の言ふことに背いてはなりませぬ
二、年長者には御辞儀をしなければなりませぬ
三、虚言を言ふてはなりませぬ
四、卑怯な振舞をしてはなりませぬ
五、弱い者をいぢめてはなりませぬ
六、屋外で飲食をしてはなりませぬ
七、屋外で婦人と言葉を交してはなりませぬ
ならぬものはならぬものです
「嘘をついてはならない」「弱者をいじめてはならない」「卑怯な行動をしてはならない」といった倫理は、人が人として社会生活を営む上で議論の余地がない根本原則です。言い訳や屁理屈を許さず、人間としての正しい生き方を直感的に身体へ染み込ませるための哲学が、この結びの言葉に込められています。