英語圏の映画作品やタイトルの命名法にも、単数と複数の明確な意図が反映されている。その好例が、名作映画のタイトルに見る対比だ。
ヒットアニメーション映画『ハッピー フィート』の原題は『Happy Feet』である。タップダンスを愛するペンギンが主役の本作において、主人公は両足を使って軽快なステップを刻む。だからこそタイトルは複数形の「Feet」でなければならない。ペンギンの「両足」が物語の核心であり、躍動するタップダンスのイメージそのものを提示しているのだ。
対照的なのが、ダニエル・デイ=ルイスがアカデミー主演男優賞を獲得した実話に基づく映画『マイ・レフトフット』(原題:My Left Foot)だ。脳性まひを患い、自らの「左足」だけを自由に動かして執筆活動を行った画家クリスティ・ブラウンの半生を描いている。この場合、彼の身体の中で意思通りに動く唯一の足、すなわち単数の「Foot」を指し示している。タイトルひとつを取っても、単数と複数の選択が作品のテーマや感情的な重みを正確に表現していることが分かる。