しかし、救済劇の裏側には過酷な代償が存在していました。細木数子さんと島倉千代子さんの間に一体何があったのか——その核心は、興行権の独占と徹底した人間関係の統制にありました。
細木さんは借金回収とマネジメントの名目で島倉さんの興行権を完全に掌握。島倉さんには息をつく暇もないほどの過密な地方巡業(いわゆるドサ回り)が課され、得られた高額な出演料の大半は借金返済と事務所の経費に充てられました。島倉さんの手元に残る生活費は極めてわずかだったと伝えられています。
さらに深刻だったのは精神的な支配でした。仕事のキャスティングからスタッフの選定、果ては私生活の交友関係に至るまで細木さんの許可が必要となり、島倉さんは次第に「助けてもらった恩」と「自由を奪われた恐怖」の狭間で孤立感を深めていきます。
決定打となったのは、金銭の流れの不透明さとプロデュース方針を巡る激しい衝突でした。「このままでは一人の人間として生きていけない」と限界を悟った島倉さんは、1980年代初頭、周囲の支援を得て細木さんのもとを命がけで離脱。これに激怒した細木さんとの関係は完全に破綻し、事実上の絶縁状態へと突入しました。