本作のバックボーンとなったのは、作家・和田登が緻密な取材に基づいて書き上げた原作小説だ。和田登の温かくも冷徹な眼差しは、志田周子の功績を単なる聖人君子として称えるのではなく、葛藤し、傷つき、それでも前を向く生身の人間のドラマとして定着させた。
その志を継承した映画「いしゃ先生」製作委員会は、山形県の美しい自然と厳しい冬のロケーションを背景に、リアルな映像美を追求した。地元住民の全面的な協力のもとで撮影された風景や町並みは、単なる背景を超え、物語のもうひとりの主人公として圧倒的な存在感を放つ。地域と一体となった制作陣の熱意が、時代を超えて届く誠実な映画体験を完成させた。