本作が感情を激しく揺さぶる理由は、詩情だけでなく、計算し尽くされた音楽的構造にも隠されています。アコースティックギターの静かなアルペジオと語りかけるようなAメロから始まり、Bメロで徐々に緊張感を高め、サビで一気に視界が開けるドラマティックな構成が採用されています。
音楽理論の観点から見ると、サビに向かう展開においてサブドミナント(IV)からドミナント(V)、そしてトニック(I)へと力強く解決する王道のコード進行を基盤にしつつ、要所に挟み込まれるメジャーセブンスやテンションコードが、切なさと晴れやかさを同時に想起させます。この「哀愁を帯びた祝祭感」が、聴き手の胸に眠る抑圧された感情を解放する引き金となります。
さらに後半にかけて重なり合うゴスペル調の重厚なバックコーラスと、地声とファルセットを自在に行き来する中島みゆきのボーカルダイナミクスが合わさることで、個人の歌唱を超越した祈りのような響きが生まれます。聴き手は自ずと自らの人生の軌跡を楽曲に投影し、抑えきれない涙と浄化(カタルシス)を体験することになります。