貝木泥舟というキャラクターを語る上で絶対に外せないのが、彼が遺した屈指の名言、「偽物の方が価値がある」というパラドックスだ。本物になろうとする意図、本物になろうとする努力の中にこそ、最初から本物であるものよりも遥かに強い価値が存在するという論理。この哲学が劇的な結実を見せたのが、シリーズ屈指の名作『恋物語』である。
『恋物語』において、貝木は蛇神と化した千石撫子を騙し、阿良々木暦たちの命を救うという絶望的な任務に挑む。自分の命すら危うい状況下で、彼は圧倒的な詐欺技術と心理戦を駆使し、神様すらも欺いて見せた。本物と偽物の境界線を揺るがす彼の独白と行動は、単なるアニメの枠を超え、ライトノベル業界におけるキャラ造形の歴史を塗り替えるほどの衝撃を与えたのだ。