『鬼平犯科帳』を読んでいると、主人公の長谷川平蔵や密偵たちが集う軍鶏鍋屋「五鉄」の情景をはじめ、湯気立つ江戸の料理が無性に食べたくなります。なかでも家庭で手軽に再現でき、池波自身も晩酌の友としてこよなく愛したのが「ねぎま鍋」です。
当時は保存技術が未発達だったため、傷みやすいマグロの脂身(現在のトロ)は捨てられるか安価で流通していました。それをぶつ切りにし、たっぷりの葱と一緒に醤油ベースの出汁で煮込んだのがねぎま鍋のルーツです。
【家庭で作る池波流ねぎま鍋の簡単レシピ】
- 材料(2人前):マグロの切り身(中トロまたは赤身と脂身のバランスが良い部位)200g、太葱(千寿葱など甘みのある白葱)2〜3本、出汁(昆布と鰹節)400ml、濃口醤油大さじ3、みりん大さじ2、酒大さじ2、粉山椒または七味唐辛子適量。
- 下準備:マグロは一口大の角切りにし、熱湯をさっとかけて冷水にとり、水気を拭き取ります(このひと手間で生臭さが消えます)。葱は3cmほどの長さにぶつ切りにします。
- 調理:小鍋に出汁、醤油、みりん、酒を合わせて煮立たせます。先に葱を入れて火を通し、葱がしんなりとして甘みが出たところでマグロを加えます。
- ポイント:マグロは煮込みすぎず、表面に火が通り中心がほんのりレアな状態で引き上げるのが池波流の極意です。仕上げに粉山椒を少し振って熱々をいただきます。
マグロから溶け出した上質な脂が葱に染み込み、出汁の旨味と一体化する瞬間は格別です。熱燗を用意すれば、自宅の食卓があっという間に『鬼平犯科帳』の情緒に染まります。