仲代達矢の名を一躍トップスターへと押し上げたのが、巨匠・小林正樹監督との出会いでした。小林監督は早くから仲代の類まれな資質を見抜き、映画『壁あつき部屋』に抜擢。その後、映画史に残る大作群で主役を託すことになります。
その代表格が、全6部構成・上映時間約9時間半という破格のスケールで製作された不朽の名作『人間の條件』(1959〜1961年)です。主人公・梶役を熱演した仲代は、戦争の不条理に抗いながら人間性を失うまいともがく青年の苦悩を全身全霊で表現。極寒の地での過酷な長期ロケに耐え抜き、心身ともに削りながら演じきった姿は、世界的な大絶賛を浴びました。
さらに1962年の映画『切腹』では、当時まだ20代後半でありながら、壮年の浪人・津雲半四郎役を熱演。重厚な太刀筋と、武家社会の虚飾を糾弾する気迫に満ちた長台詞は圧巻の一言で、カンヌ国際映画祭審査員特別賞を受賞するなど国際的な評価を不動のものにしました。