常照皇寺が広く知られる最大の理由は、境内に咲き誇る数々の名木です。特に春の桜シーズンには、性質も由来も異なる貴重な桜が境内に彩りを添えます。
筆頭に挙げられるのが、国指定天然記念物「九重桜(ここのえざくら)」です。光厳法皇のお手植えと伝わり、推定樹齢は600年以上。一重咲きと八重咲きが混在するヤマザクラの変種(ヤエヤマザクラ系)で、太い幹から四方に枝を広げる姿は圧巻の存在感を誇ります。長年の風雪により樹勢保護の支柱が施されていますが、老樹ならではの凛とした生命力を放ちます。
さらに、京都御所から枝分けされたと伝わる「左近の桜」、江戸時代初期に後水尾天皇があまりの美しさに牛車を引き返して愛でたという伝承を持つ「御車返しの桜(みくるまがえしのざくら)」が揃い、見る者を魅了します。
京北エリアは京都市街地(中京区や下京区)と比較して標高が高く、平均気温が2〜3度ほど低いため、桜の見頃は例年4月中旬から4月下旬頃となります。市内の桜が散り終えた頃に満開を迎えるため、春の「遅咲き名所」としても重宝されています。
また、秋の紅葉も格別です。背後の山々を借景にした池泉回遊式庭園や方丈前の参道が深紅のカエデに染まり、観光客で溢れかえる市内中心部では味わえない静寂の美を堪能できます。