本作のメガホンをとったオーストリア出身の監督コンビ、ヴェロニカ・フランツとセヴリン・フィアラは、デビュー作『グッドナイト・マミー』で世界に衝撃を与えた鬼才だ。彼らの演出は、安易なジャンプスケア(脅かし演出)を徹底して排除し、不穏な空気と構図の美学によって観客の心理をじわじわと追い詰める手法に長けている。
徹底して自然光と薄暗い間接照明にこだわったカメラワークは、木造建築特有の軋みや風の唸り声といった環境音と完璧にシンクロする。ドールハウスをモチーフにした象徴的なカットや、冷徹なまでに左右対称を意識した画面構成は、登場人物たちが逃れられない運命の檻に閉じ込められている感覚を冷酷に描き出している。