あの日、彼女の身に起きたのは劇的な体調の崩壊ではなかった。むしろ、見過ごしてしまいそうなほど微細な「違和感」だったという。
滑舌が滑らかにいかない。手元がどこかおぼつかない。普段通りに喋っているつもりなのに、言葉がわずかに口の中で引っかかる。多くの人が「疲れているだけ」「寝れば治る」と片付けてしまいがちな一瞬の出来事である。しかし、この小さなサインこそが、脳の血管がつまる前兆にほかならなかった。
自分の体に起きている異常を「おかしい」と直感したこと。それが、その後の運命を大きく分ける第一歩となった。