事件の全体像を捉えようとするとき、誰もがその複雑怪奇な人間関係に足を取られる。当時の捜査資料や独自取材記録によって描き出された相関図は、常人の理解を絶する入り組み方を見せていた。角田美代子の実子や内縁の夫、親族のみならず、高松市、高知市、尼崎市など各地で捕らえられた複数の家族が、ひとつの巨大な「疑似家族」として同じ屋根の下に囲い込まれていたのだ。
その相関図が暴き出すのは、暴力の被害者が次のターゲットに対する加害者へと反転させられる冷酷なメカニズムである。ある家族から奪い取った資産が尽きると、その家族の親族関係を洗い出し、新たな獲物へと触手を伸ばす。搾取と暴力のパイプラインは途切れることなく循環し、連鎖する過程で何人もの命がベランダの物置小屋やドラム缶の中で消えていった。逃走の機会がありながら逃げられなかった被害者たちの孤立無援の心理は、この精緻に組み上げられた暴力構造の中にこそある。