スイスでの最期を選択する場合、避けて通れないのが経済的負担と煩雑な事務手続きです。非営利団体であるディグニタスであっても、医師の診察料、致死薬の処方・保管管理、公証人や警察・検察への届出費用、現地での火葬および遺骨の国際搬送費用などの実費が発生します。
ディグニタスを利用する際、団体へ支払う直接的な費用は概ね1万〜1万2,000スイスフラン前後です。これに加え、日本からの往復航空運賃、付き添い家族の渡航費、現地滞在費、さらに医療書類の公的翻訳・公証費用などが加算されます。近年の歴史的なスイスフラン高および円安の影響により、日本円換算での総費用は約200万円〜350万円に達するケースが一般的です。経済的な困窮者に対しては減免制度も存在しますが、日本からの渡航自体にかかる移動費は自己負担となります。
ディグニタスにおける申請手順は以下の通り、幾重ものチェックを経て慎重に進められます。
ステップ1:会員登録と書類提出
団体へ入会申込みを行い、年会費を納入。過去の全病歴、詳細な英文医師診断書、および「なぜ自死を望むのか」を綴った本人の自筆レターを提出します。
ステップ2:医師による事前審査(グリーンライト)
提携するスイスの独立した医師が書類を精査し、致死薬の処方が倫理的・医学的に正当であると認められた場合のみ「暫定的な許可(通称:グリーンライト)」が出されます。
ステップ3:現地での対面診察(2回以上)
スイス渡航後、独立した医師と最低2回の個別面談を実施。病状の末期性、代替治療の有無、そして何より「外部からの圧力や強制がないか」「判断能力が完全か」を徹底的に確認されます。
ステップ4:実施と司法当局による検視
最終同意の確認後、患者自身が致死薬を服用または点滴装置を作動させます。逝去後は直ちに現地警察と検死官が現場へ入り、事件性や違法性がないかの厳密な調査が行われます。