そもそも、画面上のテンキーから上下左右に指を叩く動作はどのようにして世界標準となったのか。その原点を辿ると、UI(ユーザーインターフェース)研究者である増井俊之氏が提唱した革新的な入力概念に行き着く。従来のボタン連打式「トグル入力」が抱えていた過剰なタップ数という課題に対し、方向という次元を加えることで文字選択を最小歩数に抑えるロジックは、当時のモバイル世界に激震を与えた。
この革新にいち早く着目し、世界規模の標準へと押し上げたのがAppleの創業者スティーブ・ジョブズ率いる開発チームだ。iPhoneの爆発的普及とともにフリック操作はフリック入力としてiOSの根幹に組み込まれ、やがてGoogleが率いるAndroid陣営も含めたスマートフォンのグローバル標準へと昇華していった。今日、私たちが何気なく行っているフリックは、人間工学とソフトウエア工学が交差する歴史的イノベーションの結晶なのだ。