水族館での展示が終息に向かう一方で、日本の自然環境において驚くべき生命のドラマが進行しています。北海道厚岸郡浜中町の「霧多布岬(きりたっぷみさき)」や根室半島周辺の沿岸域において、野生ラッコの定着と繁殖が確認されています。
北方領土・千島列島方面から南下してきた個体群が、豊かな海藻(コンブ)の茂る岩礁地帯を住処とし、子育てを行う姿が連日報告されています。道東の沿岸で確認される野生ラッコの生息数は数十頭規模に達しており、観光客や自然愛好家が崖の上から双眼鏡で観察する姿が日常の光景となりました。
現地を取材するジャーナリストや自然ガイドの証言からは、現場のリアルな熱量と同時に、深刻な摩擦も浮かび上がっています。
「波間に揺られながら、お腹の上で子どもを抱いて毛づくろいする親ラッコの姿を肉眼で捉えた瞬間、言葉を失うほどの感動を覚えました。しかし同時に、観察者のマナー違反も目立ちます。カヤックで過度に接近したり、ドローンを低空飛行させて母子をパニックに陥らせる事例が後を絶ちません」(現地ネイチャーガイドの証言)
さらに、地域経済の基盤である沿岸漁業者との利害衝突も無視できない問題です。ラッコは1日に体重の約20〜30%に相当する高級魚介類(ウニ、アワビ、カニ、貝類)を消費するため、地元漁協からはウニ漁などへの食害を懸念する声が上がっています。野生復帰を単なる美談で終わらせず、漁業被害のモニタリングと適切な観光ルールの法制化が急務となっています。