ファンにとって最大の関心事の一つが、「なぜ上戸彩さんは主演を退き、沢村一樹さんへと主役が交代したのか」という現実的なキャスティングの背景です。インターネット上では一時期「不仲による降板」「体調不良」といった根拠のない憶測も飛び交いましたが、実際の要因ははるかに前向きかつ現実的なものでした。
第一の決定打となったのは、上戸彩さんのライフステージの変化です。2010年のシーズン1、2011年のシーズン2を経て、上戸さんは2012年に結婚、2015年に第1子を出産されました。連ドラの単独主演は、1クール(約3ヶ月間)にわたり早朝から深夜まで拘束される過酷な現場です。育児とトップ女優としての活動を両立させる過程において、フル稼働の座長を務めることはスケジュール的・体力的に極めて困難な状況にありました。
第二の理由は、『絶対零度』シリーズ自体が目指した大胆なリブランディングにあります。シーズン1の「コールド・ケース(未解決事件)」、シーズン2の「アンダーカバー(特殊潜入捜査)」を経て、フジテレビ制作陣は「AI予測による未然犯罪捜査」という極めてダークで哲学的なテーマへの挑戦を決定しました。そこで白羽の矢が立ったのが、表の軽妙さと裏の狂気を併せ持つ実力派俳優・沢村一樹さんでした。
上戸彩さんを完全降板させるのではなく「特別出演(キーマン)」として物語の核に配置したこの采配は、日本のテレビドラマ界におけるシリーズ刷新のモデルケースとして高く評価されています。上戸さん自身も限られた出演シーンの中で圧倒的な存在感を放ち、作品の精神的支柱であり続けました。