初戦のドイツ戦、そして第3戦のスペイン戦。世界のフットボール識者たちが一様に首を傾げ、やがて脱帽したのが、日本が見せた異次元の試合運びでした。この歴史的アップセットは、偶然の産物などではありません。指揮官・森保一監督が練り上げたリアリズム戦術の賜物でした。
ドイツ戦逆転勝利の理由を紐解くと、前半と後半で見せた「計算された二面性」に辿り着きます。前半は4バックでブロックを敷き、ボール保持率で圧倒されながらも最少失点(PKによる1点)に抑えて耐え忍びました。そして後半開始と同時に富安健洋を投入して3バック(守備時5バック)へシフト。さらに三笘薫、堂安律、南野拓実、浅野拓磨と攻撃的なタレントを惜しみなくピッチへ送り込み、ドイツ陣内での前線プレッシングを一気に加速させたのです。
名将ハンジ・フリック率いるドイツは、日本の急激なギアチェンジに対応できず自陣でのビルドアップを寸断されました。75分に生まれた同点弾、そして83分の浅野拓磨による神トラップからのニア上ぶち抜きゴールは、日本代表のフィジカルと規律が欧州エリートを凌駕した瞬間でした。
同様のシナリオは第3戦でも再現されます。スペイン戦ハイライト結果を見ても明らかなように、日本は前半11分にモラタに先制を許し、ボール保持率は一時15パーセント台まで落ち込みました。しかしハーフタイム、森保監督は迷わず堂安と三笘を同時投入。後半開始わずか3分、ペナルティエリア手前でボールを奪った堂安律が強烈な左足ミドルシュートを突き刺し、世界を震撼させます。
この一撃に対する堂安律ゴール海外の反応は熱烈を極めました。英BBCは「日本のゲームチェンジャーが放った雷鳴のような弾道」と絶賛し、独ビルト紙は「ブンデスリーガを知り尽くした男がスペインのパスサッカーを完膚なきまでに破壊した」と報道。交代選手が即座に決定的な仕事をする采配の妙と、チーム全体の戦術遂行能力の高さは、大会屈指のインテリジェンスとして世界中に刻み込まれました。
批判を浴びることも多かった森保一監督采配と評価は、この2試合を境に180度転換します。相手を観察して前半を捨て石にし、交代枠5人制をフル活用して後半に一気に仕留める「タイムシェアリング戦術」は、トーナメントにおける究極の現実主義として国際サッカー連盟(FIFA)のテクニカルスタディグループからも高く評価されることになりました。