菅田将暉という俳優の最大の武器は、役に完全に憑依するカメレオン的な変幻自在さにある。髪型や体型を劇的に変えるビジュアルの豹変ぶりはもちろんのこと、役柄ごとに声のトーン、歩き方、視線の揺らぎまでをも完璧にコントロールしてみせる。爽やかな学園ものから、泥臭いアウトロー、癖のある怪役、繊細な青年像まで、彼が演じるとそのキャラクターが生身の人間として呼吸し始める。
『火花』での葛藤する芸人役や、『ミステリと言う勿れ』での独特の持論を展開する大学生役など、個性が強すぎるキャラクターであっても、観客を自らの世界観へ一気に引きずり込む力がある。役に自分を寄せるのではなく、役に自我を差し出すようなその姿勢が、彼を単なる人気俳優から稀代の表現者へと押し上げたのだ。