経済要因に加え、制度面と政治面の摩擦も心理的・物理的な壁として立ちはだかっています。なかでもビザ発給要件と渡航制限の経緯を振り返ると、個人観光ビザ取得に対する所得証明や資産要件の高さが、一般層の渡航ハードルを押し上げ続けている現状があります。
日本側が設定する数次ビザの発給基準には、一定水準以上の年収や銀行預金残高の証明が求められます。偽造書類の横行対策などによる審査の厳格化も相まって、気軽に渡航手続きを完了できる層は限られた高所得層に限定される形となりました。航空便の復便ペースが路線によってまちまちである点や、燃油サーチャージの高止まりも、個人旅行者の足かせとなっています。
また、日中関係悪化とインバウンドへの影響も見逃せません。処理水放出問題を巡る中国国内メディアの過熱報道や、歴史認識・安全保障を巡る摩擦が起きるたび、中国のSNS上では日本旅行に対する風当たりが強まる現象が繰り返されてきました。渡航そのものが全面的に禁止されているわけではないものの、「周囲の目を気にして日本旅行を控える」「公務員や国有企業職員が渡航申請を出しづらい」といった心理的制約が、回復の勢いを削ぐ一因として作用しています。