「蝋人形」と聞くと、現在はお台場のデックス東京ビーチにあるマダム・タッソー東京を思い浮かべる方が多いはずです。しかし、両者のコンセプトと体験価値は全くの別物と言えます。
マダム・タッソーは、現代のハリウッドスター、世界的アスリート、人気アイドルなど「誰もが知る時代のセレブリティ」と肩を並べ、自由に触れてツーショット写真を撮影できる明るくポップなインタラクティブ空間です。
対する東京タワー蝋人形館は、ロンドンの老舗工房から輸入された伝統的な蝋人形技術をベースにしながらも、館内にはどこか妖しく退廃的な空気が漂っていました。大衆受けに媚びることなく、プログレロックや歴史の暗黒面に振り切った展示構成は、商業施設というよりも「昭和のアンダーグラウンド博物館」と呼ぶにふさわしい異様さを放っていたのです。この唯一無二の毒気の強さこそが、閉館から年月が経過してもなお人々を惹きつけてやまない理由です。