本作を一目見れば、制作スタッフが本気でスパイ映画の系譜に挑もうとしていた意図が瞬時に伝わってくる。冒頭、極秘任務を遂行する少女スパイ・レモンのスタイリッシュな身のこなしと、闇夜に流れる緊張感あふれるスコア。そこにはハリウッドのクラシックな諜報映画に対する深いリスペクトが充満していた。ガジェットの緻密な造形や潜入ルートの設計、追撃戦における視点移動に至るまで、アニメーションならではのデフォルメを効かせつつも、物理的な重厚さを決して損なわない。
そこに野原しんのすけという超弩級の不確定要素が突如として放り込まれる。このギャップと融合こそが、映画全体に独特のドライブ感を生み出すエンジンだ。単なるコメディのパロディにとどまらず、本格的なスパイアクションの文脈を徹底して踏襲しているからこそ、ギャグの一撃一撃が強烈なアクセントとして機能する。