ネット史に刻まれる「コイルショック」の引き金が引かれたのは、2008年5月下旬のことでした。同年夏に公開を控えていた劇場版『ポケットモンスター ダイヤモンド&パール ギラティナと氷空の花束 シェイミ』のタイアップ企画として、子ども向けポータルサイト「Yahoo!キッズ」上でポケモン人気投票が開催されたことがすべての始まりです。
本来であれば、映画の主役であるシェイミやギラティナ、国民的人気者のピカチュウが上位を争うはずの企画でした。しかし、この投票システムを発見した匿名掲示板「2ちゃんねる」のニュース速報(VIP)板のユーザー(通称VIPPER)たちが、「子どもたちを驚かせよう」「無機質なコイルを1位に担ぎ上げたら面白いのではないか」と画策。掲示板上で「コイルに清き一票を」という呼びかけが一気に拡散し、大規模な組織票運動へと発展しました。
なぜ数あるポケモンの中でコイルが選ばれたのか。その理由は、当時のVIPPERらしいシニカルなユーモアにありました。「映画で活躍する可愛いマスコットキャラを差し置いて、無骨なネジと磁石のポケモンがトップに君臨するシュールさ」がツボにハマったのです。さらに、投票ページのリストで押しやすい位置にあったことや、進化前の素朴なビジュアルが醸し出す哀愁が、ネットユーザーの悪ノリを加速させる決定打となりました。