サンエックスを代表する二大巨頭である「リラックマ」と「すみっコぐらし」。両作品が誕生した背景には、当時のデザイナー自身が抱えていたリアルな実感や葛藤がありました。
リラックマ:激務に追われる現代人への「だららん」という処方箋
2003年に誕生したリラックマを生み出したのは、当時サンエックスの社内デザイナーを務めていたコンドウアキ氏です。武蔵野美術大学油絵学科を卒業後に入社した同氏は、多忙を極める日々のなかで「ペットを飼いたいけれど、忙しくて犬や猫の世話ができない」「もし着ぐるみを着ていて、勝手にくつろいでくれる居候のような存在がいたらどれほど楽だろうか」という極めて個人的な願望から着想を得ました。
当時のインタビューや自著で語られている通り、あえて「背中にチャックがある着ぐるみ」「中身は正体不明」「だらだらゴロゴロして家事もしない」という、従来のキャラクタービジネスにおけるタブーを詰め込んだ設計が、働く大人の女性の罪悪感を解き放ち、熱狂的な支持を集める決定打となりました。
すみっコぐらし:ノートの隅の落書きから生まれた「居場所」の物語
2012年に登場し、劇場版アニメでも大人を泣かせる作品として絶賛されたすみっコぐらし。その生みの親は、元サンエックスデザイナーのよこみぞゆり氏(多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒)です。
よこみぞ氏が学生時代、ノートの隅に描いていた落書きや、パレットの端に残った絵の具の感覚が原点となっています。「電車に乗れば端の席から埋まり、カフェに行けば隅の席を探してしまう」という日本人の奥ゆかしい心理に着目し、社内コンペに提出した企画が見事に採用されました。
「寒がりのしろくま」「自分がペンギンか自信がないぺんぎん?」「食べ残されたとんかつのはじっこ」など、登場キャラクターの全員が何かしらのコンプレックスや居心地の悪さを抱えています。しかし、彼らはお互いを否定せず、ただ寄り添い合って隅っこで暮らしています。この過度な自己主張を求めない姿勢が、SNS疲れや競争社会に疲弊した人々の心に深く刺さったのです。